精神症状の漢方治療について

精神症状では、もちろん抗精神病薬による治療が基本となります。

しかし、眠れないことや、自律神経(自分の意思とは関係なく体の機能を調節している神経)のバランスが乱れた状態が続き、心身共に消耗していると考えられます。このような観点から、体力を回復する目的で補剤気剤と呼ばれる漢方薬を抗精神病薬に併用すると効果的な場合がよくあります。

補剤として、人参養栄湯(にんじんようえいとうとう)の処方が使われ、心身の消耗に対して気剤である、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)桂枝竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、眠れない場合、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、神経が高ぶっている時には、抑肝散(よくかんさん)の処方が使われます。

自律神経系の調節作用を期待して、気剤である半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)柴朴湯(さいぼくとう)もよく用いられます。これらの処方は、抑うつ状態のみならず不安やパニック障害にも効果的です。

漢方の診断法の一つに、舌の状態を観察する舌診という漢方独自の診断法がありますが、舌の苔(舌苔)が白く厚い場合に適用があるといわれています。
漢方治療は、精神症状に伴う身体症状の改善にも効果的な場合が多くあります。

例えば、喉の閉塞感や不快感には、先ほど述べた半夏厚朴湯がよく効きます。
冷えや筋肉痛では葛根湯(かっこんとう)、頭痛では五苓散(ごれいさん)が効果的な場合があります。
漢方治療のみでもかなりの効果がある場合も珍しくありません。

先に述べました半夏厚朴湯も良い処方ですが、疲労感が強い場合では、補中益気湯がよく使われます。

更年期障害の症状と精神疾患の症状は、区別が案外難しいのですが、更年期における不定愁訴には、加味逍遙散(かみしょうようさん)がよく使われます。