うつ状態に対する診断的アプローチ(診療部門-城山病院)

心の羅針盤は、仕事のつまずきや、人間関係のトラブルなどを抱くことで“不安、つらい、イライラする、悲しむ”など、マイナス感情へと向きを変えます。この感情の変化は、専門用語で“情動”といい、情動が長く続くことで“不安な、つらい、イライラする、悲しい”という“気分”になります。

人は、心理学的負担=“精神的ストレス”由来の不快な気分を感じた時、性格という“すべ”で立ち向かいます。性格的に明るく、社交的で、失敗への拘りが比較的少ない方は、“ウツウツ気分”を発散する意味で“お酒を飲んで気分をまぎらす、いろいろな趣味に時間を費やす”ことにより、精神的ストレスに応戦し環境に順応します。

でも、話しが苦手で無口であるとか、周りに気を使う、几帳面、失敗などに拘りやすい方は、ストレスのシャワーを浴びやすく“捕らわれの身”になりがちです。やがては、さきほど触れた“うつ”的気分が次第に仕事や日常生活面の重荷となり、医療機関への受診をやむなくされます。

医療機関では、受診されるに至った経緯、今の気分、体調面などについて問診されます。さらに、診察の結果“うつ状態”と診断された方は、ご自身で記入するアンケート方式の心理検査が行われます。

“うつ状態”の治療は、診察時の精神状態像や、心理検査の結果などを参考に開始されます。日常診療でよく遭遇する場面として、怒りやイライラ感、不眠や頭痛などを強く訴えられる患者さんの場合、心理検査は、重症と判定される傾向にあります。だからといって、薬物療法は、必ずしも、いきなり抗うつ剤が最初に選択されるわけではありません。

IT技術が浸透した医療の現場では、ほとんどの診療科で画像による診断と治療が行われています。もちろん、“うつ状態”についても、PETSPECTと呼ばれる画像による診断や治療がなされていますが、これらの検査法は、特定の医療機関に限られます。

当院で検討を続けております“うつ状態”の画像情報は、ホルター心電図で記録された脈(心拍)の揺らぎ分析によるものです。微妙に揺らぐ脈の間隔に注目した理由は、“うつ状態”にある多くの患者さんが、そうでない方に比べて、“脈が速い”(専門用語では、頻脈化・頻拍化いいます)という客観的な事実があげられます。“うつ状態”に見舞われた方は、なぜ脈が速くなるのか。その疑問が原点となり、当院では、脈の間隔を決定する自律神経と精神的ストレスとの関連を画像化して“うつ状態”の診断と治療に活用しています。

次回は、1979年、山下格先生が提唱されました“ストレスと自律神経との関連”について、画像による解説を予定しています。

城山病院(熊本・精神科)